派遣法改正案の問題点、そして野党がやるべき本質的な議論。


改善?改悪?派遣法改正案のポイントを整理 (日本テレビ系(NNN))
改正案の問題点が大変分かりやすい動画。(2分18秒)

派遣法改正、“雇い止め”通告 広がる不安 (TBS News i)
>厚生労働省によりますと、派遣労働者は全国でおよそ126万人。そのうち49万人が“専門26業務”に就いています。

この49万人が、3年で終了の対象者で、法改正を睨んで、もうあらかじめ切っておこうとする動きも始まっています。

[2]最長3年へ、派遣の専門26業務撤廃 (ITpro、登録必要)
>ソフトウエア開発に携わる派遣技術者の無期雇用は約2割にとどまるのが現状だ(図3)。約8割は有期雇用となっている。

派遣元で無期雇用者であれば3年の制限はありませんが、ソフトウェア開発している派遣技術者の無期雇用化は進んでいません。

私は今回の改正に反対であるし、野党には踏ん張って頂きたいとは思っていますが、野党の、「生涯派遣だから反対」「固定化するから反対」という主張と、それでいて 26業務存続を望む(≒派遣で仕事を続けたい)という主張は矛盾していると思います。

労働法学者みたいな人達は「本来 派遣は一時的な働き方であり、無くすべきである」と繰り返しますが、実際は企業側は、コストが安いなら使うよ、高く掛かる(正社員として雇う)なら使えないよ、というのが本音かつ実態であり、 その状況の中で、企業にとっても、労働者にとっても派遣就業によって仕事を確保できているのが、現状です。

また、派遣労働者の中にも、正社員を希望しない人が一定の割合で存在します。正社員になると残業などの負担が増えるため、子育てや家庭の事情、私生活との両立が難しくなる立場の人が、あえて派遣という働き方を選んでいます。

派遣社員が正社員の打診を断る理由 1位「負担が増える」、2位「人間関係が煩わしい」 – 夕刊アメーバニュース

このような実態を十分踏まえた上で、労働者の働き方に対する自由度を制約せず、雇用機会は残したまま、待遇の低さについては手を入れるような法制化を目指すべきです。

改正するなら、次のような方向にするべきでしょう:

  • 専門26業務を含み、派遣で長く続けたい人には続ける自由を残す。 本来派遣就業は、本人の意志でやめたくなったらすぐやめられる自由があります。やめる自由/続ける自由の両方があれば良い。
  • 同一労働同一賃金を推進する。 派遣就業者は、役に立たなければ契約を切られるという緊張感から仕事のアウトプットを意識している一方で、「あの正社員、たいして貢献していないのに高給で安泰だな…」という不公平感を感じています。 行き過ぎた能力主義にならない範囲で、同じ仕事をしているなら報酬も同じにする。さらに、教育が不要でいつでも契約を切れる便利な派遣労働者は、その分、正社員より時給が高くなるべきです。そうすれば、「派遣より正社員を雇おう」というインセンティブにもなります。

派遣法改正案は、今国会で3回目の提出にもかかわらず、このような議論にまで深まるには全然至ってないのは嘆かわしいことだと思います。与党は今国会の会期を8月まで延長することを検討しており、実際そうなれば、審議拒否や委員長への飛びかかり暴力などの馬鹿げた戦術も、少しの時間稼ぎにしかならないでしょう。

労働状況の実態を踏まえ、(維新がやったように) 内容を修正した対案となる法案を作成し、自民案にぶつけて飲ませる。当然飲まないでしょうから、そこで議論を継続する。野党にできる事は、もっと色々あるのではないでしょうか。