“人工知能” は、インフレを起こす。
コンピューターが何か問題を解くとき、アルゴリズムが存在する。例えば、二つの自然数の最大公約数を求めるには、ユークリッドの互除法の手順に従えばよい、というように。 このように、単純な手続きで解ける問題もあれば、そうでない問題もある。 ヒトなら解ける問題を機械で解くにはどうすればいいか。 人工知能の教科書は、大抵このようなくだりで始まる。
チェスや将棋の相手をするプログラムはそのようなものの一つであるが、今はまったく珍しくない。白物家電が宣伝文句に「人工知能搭載!」とうたった時期もあるが、ぶっちゃけて言えば「少し凝ったプログラム」によって、部屋の温度を調整したり、衣料の汚れをセンサーで感知して水量や洗う時間を手加減しているだけである。
こうやって、かつては人工知能と呼んでいたものが、”インフレ”の結果、今はそう呼ばなくなったものは多い。
もしもタイムマシンがあって、1980年頃の自分に会いに行って、iPhoneのSiriを見せたら、たいそう驚くと思う。でも、数十分使って、「これはHAL-9000みたいなものじゃないよね」とも言うと思う。
時代が変わってインフレが起きても、紙くずに変わる紙幣のようなものではない、「金」に相当する絶対的な人工知能システムが存在しそうである。 「強いAI」と呼ばれているもの。それはまだ存在しない。(と思う)