(BGM:渚にて)

ここから見る景色を あの日 はやぶさも見たのだろうか

明るく光る地球の表面から  
暗黒の空への境目は とても薄く 
地球の球体を包む膜のようだ

地球の巨大な重力
その力はまるで 宇宙に出て行く私達を 
引き留めているかのようだ

大気の中に 光の粒となって
溶け混んでいった はやぶさ

その想いを受け止め 引き継いでくれるのは 何者なのか
その姿は まだどこにも見えない


title:   HAYABUSA2 RETURN TO THE UNIVERSE

(BGM:ミッション)

2010年 6月13日 はやぶさ帰還

カプセルは無事に回収され 
はやぶさはその使命を果たした

そしてカプセルの中から 微粒子が発見される

あのとき舞い上がった イトカワの砂粒
それがカプセルの中に紛れ込んだのだ

当初の計画通りではなかったが 
我々は小惑星のかけらを持ち帰る事に成功したのだ

そして 2011年5月 
はやぶさを引き継ぐ はやぶさ2ミッションがスタートした

その目的地は 1999JU3 と呼ばれる小惑星
はやぶさと同じように この小惑星のかけらを拾って
地球まで届ける サンプルリターンミッションだ

目的地に選ばれた理由は
イトカワに比べ 炭素と水を多く含む 
C型とよばれる小惑星だった事

そして イトカワと同じように
地球に近い軌道をとる小惑星であったからだ

1999JU3 に含まれている炭素という元素は
我々 生命を形作っているもの
有機物の存在が 予想されている

46億年前 太陽系ができた頃の様子を
今もとどめている小惑星

つまり 1999JU3のかけらを持ち帰る事によって
生命の起源を探る 大きな手がかりを得ることが 期待できる

さて 地球から 1999JU3に向かうには
あらかじめその軌道を精密に決めておく必要がある

太陽の引力はとても強く
途中でその道筋を大きく変えることはできないからだ

地球と1999JU3の位置関係から 様々なパターンの軌道を計算し 
その中から 最良の条件となる軌道が選択される

こうして決定された 1999JU3 への到着日時は  2018年 6月
その軌道を遡ってみよう

地球のエネルギーを使って加速を行う地球スイングバイは
2015年の終わり

地球出発日時は 2014年の終わり頃となる

もし この時期を逃すと 最良の条件となる次の打ち上げのチャンスは
10年後となってしまうことが 分かっている

はやぶさ2ミッションは 実は何度となく
その実行が先送りされてきた

2010年 2011年にも 打ち上げのチャンスはあったのだが
それを逃し もうこれ以上待てない 瀬戸際まで来ていた

宇宙に向かう旅は 
いつ出発しても良いという訳では 無いのだ


(BGM:まだ見ぬ星)

まだ見ぬ星  1999JU3
地球からの観測で分かっていることは とても僅かだ

その大きさはイトカワのほぼ倍
そして自転周期は 7時間38分と予測されている

また その自転軸は イトカワと違い 寝ている可能性がある
これは同じ面を長期間 はやぶさ2に向けることになり
探査計画に大きく影響するかも知れない

その表面は イトカワと同じように 岩石質だと推測されるが
それがどのような状態であるかは 行ってみなければ分からない
それを知ることも 探査の目的の一つだ

そして最大の目的が 炭素や有機物を含んだ
この小惑星の岩石を採取すること

地球で生まれた私達の体を作っている
この炭素という元素はどこから来たのか

それらの元素は 皆 星の内部で作られたが
それがどのようにして 地球に存在するようになったのか
その手がかりを得ることができるかも知れない

しかしこのミッションがスタートして間もなく
その実現に必要な予算が 確保できないという事態に陥った


(BGM:旅のおもかげ)


宇宙に出て行く価値が 疑問視されたのだ

すぐに準備を始めなければ 2014年の打ち上げに
間に合わなくなってしまう

この決定は 実質的な ミッションの中止を意味した

次の打ち上げのチャンスである 10年後を待つことは
現実的には 不可能なことだったからだ

我々は 宇宙に憧れていたはずではなかったのか

その想いの理由(わけ)を 探していたのでは なかったのか

はやぶさの旅
あの 苦難の旅への答えが ミッション中止という結論であるとしたら
それは あまりにも 酷すぎる結末だ

はやぶさ
君が残したあの輝きも 消え去ろうとしていた

(カウントダウン:   はやぶさ2打ち上げまで  あと 1040日、1039,1038...)


(BGM:この想いと共に)

君が残したカプセルが初めて公開された日
1万3千人もの人が それを一目見ようと駆けつけた

7年 60億キロメートルを旅したそのカプセル
そこには 旅の苦難が刻まれていた

カプセルは日本中で展示され
多くの人が あの旅の記憶を 思い起こした

君の姿に 想いを重ねた たくさんの人達がいた

(少女) はやぶさ どうして地球に帰れないの?
       いつになったら帰れるの?
 
(母親) ばあばは 星になったけど
       はやぶさ がんばって 帰ってきたね
(少年) うん


大きくなったら宇宙飛行士になりたい
 
大きくなったら天文学者になる
 
それは どんな気持ちから生まれたと思う?


(少年) 僕は はやぶさを見つけに行く

(男性) はやぶさ 頑張ったな


一人一人の心の中に刻まれた君の姿

諦めずに進んでいくその姿は
多くの人の心に 勇気を与えた

そして我が事のように 君の復活を願った

そんな想いが ミッションを実現へ向けて動かす 
大きな力となった

2012年1月25日
予算は復活し はやぶさ2ミッションは 開発段階へと移行した

はやぶさ
君はそのすべての想いに支えられ 蘇ろうとしている


(BGM: 蘇れ、はやぶさ)

それは はやぶさの経験を生かし
様々な改良が加えられたものとなった

新しいサンプラーホーン
その先端は より確実な採取ができるように
改良が加えられた

姿勢を制御するリアクションホイールは
前回のトラブルの経験を生かして 4つだ

宇宙を駆けるためのイオンエンジン
その力は はやぶさに比べて より大きくなった

小惑星表面にクレーターを作る新しい装置 インパクタ
小惑星の表面は 太陽から来る光や放射線によって
宇宙風化を起こしている

そこで今回 クレーターを作り
風化が起きていない 地下の物質も採取するのだ
これによって 水や有機物の検出が 
より確かなものになると期待される

インパクタは 本体から切り離されたあと爆発し
ライナと呼ばれる弾丸を発射する
ライナは秒速2キロメートもの高いスピードで小惑星に打ち付けられ
クレーターを作るのだ

このクレーターの直径はわずか数メートル
その付近に確実に降下するためには
着陸の精度を高めなければならない
そのために複数のターゲットマーカーが使用される

サンプラーホーンの状態を知るために
カメラがここにも取り付けられた
このカメラは はやぶさの復活を願う 
沢山の人達の寄付金によって準備されたんだ

カメラを通して タッチダウンの瞬間を
見ることができるかも知れない

Kaバンドと呼ばれる より高い周波数用のアンテナが加えられ
メインのアンテナは二つになった
これによって より多くの情報を受け取ることができるんだ

着陸せずに観測するための様々な装置や
本体から切り離されて観測を行うカメラも搭載された

インパクタの爆発前 はやぶさ2は小惑星の陰に隠れるが
その前に カメラを分離する
このカメラがはやぶさ2の代わりに クレーター生成の様子を捉えるんだ

上空からの観測だけでは分からない 詳細なデータを得るために 
小惑星表面を直接調べる小型移動ロボット
ミネルバ2 が3機 搭載される

搭載されたカメラで 小惑星の表面を 間近で観察する
また ホッピングを行って 移動する能力も備えている

もう一つのタイプのミネルバ2は ジャンプするのに加えて
自分自身の振動により  少しずつ移動する能力を持っている

そしてさらに ドイツとフランスが開発した 着陸機
MASCOT(マスコット)が搭載される
この探査機はカメラだけでなく 磁気センサや赤外線分光顕微鏡
熱センサなどを備える

水や有機物を含めた表面物質の調査を その場で行うことができるんだ

はやぶさ
私達と共に また宇宙へ行こう
この想いと共に

(カウントダウン:   はやぶさ2打ち上げまで  あと 552日、551,550...)


(BGM: 昔日)

わたしたちが宇宙に出て行くためには
ロケットの力を借りなければならない

そしてその開発は
何十年にもわたって続けられてきた

この小さなロケットが 日本で初めて作られたロケット 
ペンシルロケットだ
ここから日本のロケット開発はスタートしたんだ

そして このロケットを作ったのが 
糸川英夫博士だ

はやぶさが行ったイトカワは 
実はこの人の名前から とられたんだよ

小さなロケットから 大きなロケットへ

数々の失敗を繰り返し 厳しい批判を受けながら
その開発は行われていった

人工衛星打ち上げ成功までの 度重なる失敗

改良を続け ようやく完成の域に達した ロケットの廃止

その苦難は どれ程のものだっただろうか

しかし 宇宙への想いは 消えることはなかった

ロケットの開発は 絶えることなく
続けられていったんだ

だから ロケットには
宇宙に向かう強い意志が 宿されているんだよ

 
(BGM: ロケット)

さて ここで前回の
はやぶさ地球出発の様子を見てみよう

地球重力から脱出するためには
秒速 11.2キロメートルもの速度が必要となる

時速に直すと 4万キロメートルを超える 途方もないスピードだ

そのスピードを出す為に ロケットには様々な工夫が凝らされている

はやぶさを打ち上げた M-V(ミューファイブ)ロケットは
固体の燃料を燃焼させて進む 固体燃料ロケットだ

燃料の中央に穴を開け 広い面積で一気に燃焼させることによって
大きな推力を得ている

そしてさらに ロケットを何段かに分ける
多段式ロケットという方式が使われている

燃焼の終った部分を捨てることによって
機体を軽くし スピードを上げるんだ

4段式ロケットとすることで 秒速 11.2キロメートルを超えるスピードを出し
はやぶさを惑星間軌道へと投入した

しかし固体燃料ロケットは その燃焼を制御することができない
推力は大きいのだが 正確な軌道のコントロールが難しい

もう一つの方式のロケットが 推進剤に液体を使う
液体燃料ロケットだ

液体燃料ロケットは低温の液体水素と液体酸素を混ぜ合わせて燃焼させ
推力を得る

燃焼のコントロールによって 推力を調整することができるので
より正確な軌道に探査機を投入することができるんだ

しかしその為には 複雑なしくみを持ったエンジンが必要になる

大きな推力を得る為に 高速で回転するターボポンプを使い
燃料に高い圧力を与えて 一気に燃焼室に送り込む
その量は1秒間に数百リットルにも及ぶ

また 固体燃料に比べ 長い時間噴射を続けることができる
燃費のよいロケットでもあるんだ

しかし 出力のコントロールができる反面
推力は あまり大きくない
ロケットが上昇を開始する瞬間は もっと大きな力が必要になる

そこで推力の大きい 固体燃料ロケットを組み合わせて使う方法が
考え出された

二つの方式の利点を組み合わせたこのロケットの全推力は
ジャンボジェットのエンジン 29個分の力がある

そして今回 君はこの H-IIA (エイチツーエー) ロケットで
宇宙に向かう

全長 53メートル
総重量 289トン
その爆発的なエネルギーに背を押され 
君は宇宙に駆け上がる


(カウントダウン:   はやぶさ2打ち上げまで  あと 4, 3, 2, 1, 0日)


(BGM: 大気の底)

この大気の底から 再び宇宙へ向かう時がやってきた

このロケットの全ての力が 
君を宇宙に送り出すために使われる

さあ いよいよ発射の時が迫った


(BGM: リフトオフ)

私達はこの星に生まれたその瞬間から
自分たちの知らない世界を知ろうとしてきた

大地で育った私達が 船に乗って大海に乗り出したように
ロケットを使い 宇宙という大海原に漕ぎ出す

それはなんと自然なことだろう

はやぶさの旅
それは 私達が地球に誕生したときから続けてきた
大きな旅の一部なのだ

さあ 飛び立て はやぶさ


(BGM: 邂逅)

いま この場所に
私達の想いを引き継ぐ者が
姿を現した


(BGM: 誕生)

宇宙に出て行くこと
それがどんなに困難であっても

地球の重力に抗い 全ての力に逆らって
私達は諦めないだろう

この想いが ある限り

さあ これから君の 新しい冒険の旅が始まる


(BGM: きみの旅路)


 "旅の無事を祈って・・・"